ラオスの保健医療を一丸となって支えていくために ~第10回ラオス保健研究フォーラムに参加して得たもの~

今日は、2016年10月27・28日にサワンナケート県で開催された、ラオスが主催する学術集会のお話です。近年こそ増加傾向にあるものの、ラオス国内における保健・医療の研究はあまり多くありません。研究(の成果)がないということは、科学的な根拠:エビデンスに基づいて保健政策を進めて行くことが難しくなることに繋がります。つまり、どういう意味でしょうか。それは、“一般的に”言われていることでしか、問題の原因やその解決策を考えることができないということです。ラオスの子どもたちの死亡や栄養失調について、「ラオスでは〇〇が影響しているからこうしよう」ではなく、「一般的には○○が原因と言われているから」という形でしか表現できなくなってしまうということです。

ラオス保健研究フォーラムは、そのような現状を打破すべく、ラオスで研究を実施した国内外の研究者が、それらの成果を持ち寄って意見交換する場所として、10年前にスタートしました。このフォーラムは“研究”という名前がついていますが、大学や研究機関でなくても参加することができます。いえ、むしろ参加する必要があります。なぜなら、私たちのような草の根活動の組織は、研究者が発信する研究成果を学びながら、エビデンスを活動に取り入れていくことで、活動の効果を高めることができるからです。

ラオスにおけるISAPHの活動も今年で10年になりますが、奇しくも、保健研究フォーラムも今回で第10回目となります。この記念すべきフォーラムで、ISAPHも口頭発表をさせていただきました。昨年10月に実施した調査の結果から、自宅で出産する妊婦がまだ多いことや、小さな赤ちゃんに母乳以外の食べ物を与える習慣があること、また、子どもを亡くした経験のある母親が多いことなどを報告しました。多くの著名な先生方の前で発表することは非常に緊張しましたが、そのあとに、ISAPHと同じ保健分野で活動する海外の団体などから「あなたたちの活動に興味があるので、もっと詳しく聞かせてもらえませんか?」と声をかけていただき、お互いに情報交換することができました。今回の発表は、現場の活動から得られた経験や情報で、学術的研究成果とは厳密には違うかもしれませんが、私たちの情報を必要としている人がいるということを知ることができました。海外の援助団体がラオス国内で情報を得るには、このように他団体と繋がっていかなくてはなりません。保健研究フォーラムでは、研究者の興味深い研究成果を学ぶだけでなく、色々な人たちと知り合って、お互いに情報を交換し合うことができる良い機会となっています。

今回の保健研究フォーラムに参加して、研究者やNGOなど、ラオスで活動する人々が一緒になってラオスの健康問題を解決しようとしているのだ、そんな一体感を感じることができました。ISAPHは、これからも本フォーラムに参加・発表しながら、ラオスの保健医療の向上に貢献したいと思います。

ISAPH 事務局 村井 俊康
会場風景
集合写真