ラオス派遣レポート

ラオスの栄養改善プロジェクトを訪問して

2018年11月10日から12日間、ラオス共和国中部のカムアン県サイブートン郡で味の素ファンデーションの助成を得て実施している栄養改善プロジェクトを訪問しました。本件は、マラウイと同じく子どもの栄養改善を目指し、昆虫食の普及も活動の一つとして目指しています。

ラオスは東南アジア唯一の内陸国で「アジア最後の秘境」と言われ、欧米諸国の観光客に人気ですが、元フランス統治であったため、タケクでもフランス語を良く耳にします。しかし、日本語はもとより英語もあまり通じません。母国語のラオ語を話せないと日常生活も厳しいです。今回、メコン川を挟んだタイのナコンパノムから陸路でラオスに入国しましたが、日本以上に景色も車の運転ものどかです。

年齢に比較し低身長の栄養障害が多いと報告されており、タケクで出会う大人のラオス人は概ね小柄です。しかし食べ物はマラウイに比較すると10倍くらい豊富な印象で、「こんなに食材があるのに、何故栄養障害になるのか」と素朴な疑問がわきます。その答えはプロジェクトサイトで村人の生活を垣間見たり、現地の医師や看護師さんの話から、徐々に分かってきました。プロジェクトサイトのサイブートン郡の田舎では、子どもが病気で命を落とすのは極身近なこと、生活の一部で忌避すべきものと思われていないこと、そして、子どもに対する関心、子育てに対する意識がとても低く、結果、自分の子どもが何を食べているか、両親が知らないこともあるということでした。人々の健康に対する基本的な認識がとても低いと感じました。

また、周辺列強諸国から圧迫されてきた歴史のためか、現状に妥協し、改善を積極的に望まない思考があります。それに輪をかけて、経済的な貧困と母親が教育を受けていないことが状況を悪くしています。

ISAPHでは日本の地域保健活動と同様、村へアウトリーチによる保健サービスを3年間実施しました。成果として施設分娩率が21%から65%と飛躍的に向上した一方、低栄養に起因する低身長は34%から43%に逆に増加し、人々が子どもの栄養に気を配るようになるには至りませんでした。わたしたちの健康に対する価値観を押し付けるだけでは、ラオスの人々の行動変容にはつながらない、すなわち「おいしいものを食べたい」というインセンティブだけでは十分ではないと考え、人々が希求する物質的な豊かさを後押しすべく、世界的に注目されている昆虫食を利用するのが、今回のプロジェクトです。隣国タイではコオロギやアオムシを加工したお菓子がスーパーに並んでいたので、持ち帰り病院の一部の方にもご試食いただきました。見た目、虫の形のまま!?なので、外見的にNGという意見は家内を筆頭に多かったですが、2歳の娘は喜んで、畳に落ちた足やアタマも拾って食べました。ラオスには固有の昆虫食文化があり、安定的な供給ができれば副収入および栄養源として期待されます。

聖マリア病院 国際事業部 足立 基

村人への啓発活動

サイブートン郡のヘルスセンター

ラオスの食事