ラオス寄生虫感染対策プロジェクト実施報告 ~住民の行動変容を目指して~

現在、ラオス母子保健プロジェクトではISAPHの活動地区の1つであるカムアン県セバンファイ郡シーブンアン地区ブンフアナー村ドンサワン集落(人口209名)で寄生虫感染予防対策を重点的に行っています。

これまで、シーブンフアン地区在住の70名前後の母親と子どもを対象として2009年と2011年に腸管寄生虫感染状況調査を行いました。いずれにおいても母親の感染率は80%を超えており、子供の感染率も約40%と極めて高い感染状態であることが分かりました。腸管寄生虫に感染することは低栄養状態や貧血等を導く要因の1つであるため、腸管寄生虫感染予防対策は県や郡保健局をはじめ我々の課題の1つとなっていました。

こういった背景のなか、2012年7月にISAPHのカウンターパートである郡保健局と県保健局からISAPHへ腸管寄生虫感染予防対策実施の支援要請があげられました。ISAPHはその要請を受け、パイロット地区を設定し寄生虫に関する理解度調査、腸管寄生虫感染状況調査、駆虫剤投薬と駆虫効果の検討、衛生行動改善のための健康教育等を計画し、公益信託今井記念海外協力基金にご支援をいただき、2013年5月から寄生虫感染予防対策プロジェクトを実施しています。

【聞き取り調査】2013年5月と2014年1月には寄生虫の種類や感染経路、予防方法についてどれくらい住民が理解しているかを1世帯につき1~3人を対象とした聞き取り調査を実施しました。この聞き取り調査によって、5月の時点では寄生虫予防方法や感染経路を理解・認識していない人たちが多くいましたが、今年の1月の再調査では、対象者の多くが前回の調査より理解度・認識度が高まっていました。このことは、郡保健局とISAPHが共にこのプロジェクト開始から毎月数回の健康教育を実施してきた成果だと考えられます。

【便検査による腸管寄生虫感染状況調査】2013年5月と11月には、聖マリア病院国際事業部の山崎専門家がこのプロジェクトに合流し、郡保健局職員と共に対象集落で便検査を実施しました。便検査の結果から約70%の住民がなんらかの寄生虫に感染していることが確認されました。特に経皮感染した後、小腸に寄生し吸血する鉤虫や川魚を生で食べることにより感染するタイ肝吸虫の虫卵を保有している住民が多くみられました。現在、寄生虫卵保有者へは駆虫剤投薬と駆虫効果の判定のため便検査を繰り返し行っています。

2013年5月と11月の感染状況は同様でしたが、聞き取り調査の結果から知識と認識度は少しずつ高まってきています。今後も引き続き、健康教育を繰り返し行うことによって住民の寄生虫予防に関わる衛生行動が徐々に変化することが期待されます。

今回の寄生虫感染予防対策プロジェクトを実施するにあたり、助成金をいただきました公益信託今井記念海外協力基金の関係者の皆さまに心から感謝を申し上げます。

山崎専門家による便検査の様子

駆虫薬を飲む子ども

聞き取り調査による理解度や認識度の確認

ISAPH LAOS 楾 清美