ラオス地域母子保健プロジェクト活動紹介

ラオス地域母子保健プロジェクトは、2005年5月にラオス政府とMOU(了解覚書)1を締結し、現在MOU3を迎えました。このプロジェクトは、カムアン県セバンファイ郡の3地区を対象とし、母子を中心とした住民の健康と栄養、衛生状況の向上を目標としています。

MOU1では、郡保健局と共にモバイルクリニックを立ち上げ、村の巡回診療を開始しました。モバイルクリニックでは、乳幼児の成長モニタリング、妊婦健診、健康教育、予防接種、医師による診療、家族計画を行っています。医療施設までのアクセスが困難であり、また医療サービス利用率が低いといった課題を抱えるラオスで、このモバイルクリニックは、住民の健康を大きく支えるものとなりました。

MOU2では、モバイルクリニックの運営をISAPH主体から郡保健局主体へ移行し、郡保健局による活動体制の強化、持続発展性を高めました。さらに、対象地区のうち1地区でビタミンB1欠乏症による乳児死亡が多いことが判明し、JICA草の根技術協力事業の協力を受け「生き生き健康村づくりプロジェクト」を実施しました。このことにより、乳児死亡や低体重児を減少させることができました。

そしてMOU3では、シーブンフアン地区以外の2地区でも同様の成果を挙げるため、活動強化と技術の普及を行っています。また、住民が自分たちの健康に意欲的に取り組んでもらえるよう、村長や保健ボランティアに加えて女性同盟や郡と連携を図り、地域で取り組む住民の健康増進を目指しています。

これまでの成果として、低体重児の減少、ビタミンB1欠乏による乳幼児死亡の減少、妊婦健診受診率の増加、施設分娩率の増加などが挙げられます。村の妊婦が妊婦健診を受診するようになり、妊娠・分娩に伴うリスクの予防と早期発見が可能となりました。安心して健康的に妊娠期を過ごし、より安全な分娩、そして健康的に子育てができるよう力を入れています。

また、モバイルクリニック参加率も年々増加しており、それに伴い、住民の行動変容が見られるようになりました。その一つとして、産後の母親の行動変容を紹介します。ラオスでは産後の伝統的なしきたりに“食物タブー”があります。これは産後のある一定期間、食べられる食材が限られていて、それ以外のものは産後の肥立ちに悪影響を及ぼす、不吉なことが起こるなどといった考えから食べません。この“食物タブー”によって栄養不良となり、産後の体力回復の遅れや体調不良の原因となることはもちろん、母乳を飲む児の栄養状態にも影響を及ぼします。そこでISAPHの健康教育手法を用いて、これまで集団健康教育や個別指導を行ってきました。また、長老への教育も行い、母親を取り囲む周囲への教育にも取り組みました。こういった活動によって、食物タブーを行う期間を短縮したり、制限する食物を減らすようになったという声を聞くようになりました。行動変容もISAPH の活動の大きな成果だと言えます。

住民が自分たちの健康を考えて生活していけるよう、これからも地域、郡保健局と協力し、サポートしていきたいと思います。

妊婦健診での血圧測定の様子

3衛生(食・飲・住)と手洗いについての健康教育

ISAPH LAOS 田川 薫