マラウイ「子どもにやさしい地域保健プロジェクト」進捗報告

早いもので、プロジェクトが開始してすでに6カ月が過ぎました。前四半期には現地職員のアシスタント・チーフ・フィールドスタッフを雇用しました。マラウイでは高学歴でも職がない人が多く、短期の公募期間にも関わらず26人という多くの応募がありました。書類審査を通った11名を面接し、経験、熱意等を考慮し、大学で栄養を学んだ方を採用しました。若いですが、業務開始後、数ヵ月を経て自覚が芽生え、村の保健ボランティアの指導にも携われるようになりました。

プロジェクトの活動面では長く交流関係にあるムジンゲ村と、協力が期待されたチボプリラ村の2村をパイロットサイトとし、当プロジェクトの活動について村長と保健委員会へ説明しました。その後、各村でボランティアを選出し、また母親グループを組織しました。ボランティアは人口動態、グロースモニタリング、栄養・衛生ボランティアの3種類で、母親グループのリーダーもボランティアとして協力してもらっています。人口動態ボランティアは妊婦登録から子どもの出生、死亡登録を行い、生まれてから5歳になるまで継続して成長を見守ること、グロースモニタリング・ボランティアは子どもの成長を村レベルで把握すること、栄養・衛生ボランティアは子どもが十分な栄養を取れるよう母親に調理演習などを通して栄養教育をすること、母親グループのリーダーは活動が円滑に進むようプロジェクトと母親への橋渡し役として、それぞれが活動できるように計画しています。母親グループは5歳未満児を持つ母親の世帯10世帯で1グループとしました。母親グループ形成の目的は、プロジェクトの対象者である5歳未満児を持つ母親グループをプロジェクト活動の主体とすることにより、コミュニティーへのアクセスが容易となり、また、彼ら自身の村での活動のため、地の利による効果が期待できます。その他、受益者(母親)に直接裨益することができ、その家族、さらにはコミュニティーへの波及効果も期待できます。この母親グループは他の団体では「ケアグループモデル」と言っており、地域活動で成果を上げています。

ベースラインサーベイの結果をエディンゲニ・ヘルスセンター職員、ムジンバ保健局長及び環境衛生官、JICAマラウイ等に報告し、貴重なコメントをいただきました。たとえば、調査結果からProject Design Matrix (PDM)の指標の変更や追加調査などの検討が必要と指摘されました。今回の調査では2歳未満児の身体計測を実施した結果、発育阻害児率(年齢に対する身長が低い)が14.0%とマラウイ国の5歳未満児の発育阻害児率(46.0%、Multiple Indicator Cluster Survey 2006)より少なかったため、再度プロジェクトの核となる対象8村の5歳未満児を対象に測定児数も増やし身体計測をしました。その結果、発育阻害は2歳未満児平均で28.8%、5歳未満児平均では29.5%でした。保健省のカウンターパートとも協議を行い、これらの数値はマラウイ国の調査結果より低いですが、測定児数が300名以上あり、測定方法も適切で信頼できるデータであるため妥当な結果ではないかとのことでした。この結果をベースラインとする予定です。

最後に、当プロジェクトの対象地域を管轄する地域の長である「パラマウントチーフ」を表敬できました。「パラマウントチーフ」は世襲制のその地域の村長の頂点に立つ人で絶大な権力を持っています。面談したムベルワさんはマラウイでも有名な方で彼のおじいさんはマラウイのお札になっています。ムベルワさんにプロジェクトの説明をした折、協力の約束をしていただき、同行してくれたカウンターパートも興奮ぎみでした。

プロジェクトは走り出したばかりですが、スタッフ一同ゴールに向かって邁進する所存です。引き続き、皆様のご協力をよろしくお願いいたします。

村人へ活動の説明

パラマウントチーフ(左端)と

ISAPH事務局 齋藤 智子