ラオスの活動に対する支援報告- VHV 研修-

平成18 年5 月上旬より約2 ヶ月間、ISAPH ラオス活動支援のため派遣された。今回の派遣目的は、①第2 回Village Health Volunteer(VHV)の研修を支援する、②井戸設置に関連し、日本人専門家による水質検査のサポートを行う、③乳児死亡に関する調査の準備を関係者と行うことであった。

ここでは、第2 回VHV 研修支援について報告する。

研修数日前に郡保健局関係者との打ち合わせおよび予行演習の実施

今回の研修は前回の研修(体重測定)の復習と予防接種および健康教育についてである。打ち合わせ時には、予防接種の目的、現行の予防接種の問題点、その問題点の解決策をロールプレイで実施する、研修最終日に実際に予防接種をする、参加者とフォローアップの状況と問題点を話し合うなどの意見が出された。また、予行演習時には、スケジュールの確認、関係者の役割分担、参加者への注意事項、自己紹介の内容、pre-test の実施時期、VHV の役割、演習の内容、ケーススタディの内容、成長カードの保管、予防接種で予防できる疾患などについて話し合い、最終日には村の子どもに予防接種と体重測定を実施し、その後振り返り学習することを合意した。

研修の実施

研修1日目 体重測定の復習

県保健局管理部長のカンケオ氏の開講の挨拶に続き、時間厳守や講義中の禁煙などを確認した。VHV からは自己紹介(どこから来たか、経験年数、結婚の有無等)とVHV の役割を発表した。VHV の抱えている問題として、ボランティアが村人に知られていない、受け入れられていない、また、母親に健康教育をするが覚えていない、大勢の人を対象に健康教育するのがむずかしいなどの意見が出された。これに対して講師陣からは時間をかけてやっていくしかないとの助言があった。あるVHV より毎月の体重測定に関して支払いをしてほしいとの訴えがあった。自分は畑仕事を休んで半日費やして実施している、畑に行けば収穫にもなり、またお金になると。昔、体重測定の手伝いに郡保健局から3,000 キップ(約30 円)支払われていたという。その他、講師陣からは体重測定すべき子が全て測定できるよう村人への周知を徹底すること、母親へは体重測定の目的を説明するように、体重計を平らなところに置き、ゼロにしてから測定すること、横からは見ない、正常成長曲線内で体重増加がない子や減少している子の母親にはそうなった原因(食事の内容、病気の有無など)を探るような質問をするなどの助言があった。また、成長カードは1 歳まで母親が保管することとなった。その後、成長カードへの記録に関しての演習を行った。

研修2日目 予防接種について

予防接種については下記の内容に関する講義および演習が講師陣により実施された。

  1. 予防接種においてVHV が果たす役割
  2. 予防接種の大切さ(例:病気の予防ができる)
  3. 予防接種で予防できる病気について(どんな病気が予防できるのか、具体的にはその感染ルート、症状、治療、予防法など)
  4. 予防接種自体について(ラオスで実施している予防接種の種類、他の予防接種との違い、いつ接種するか、身体のどの部分に接種するか、接種後の対応についてなど)
  5. 予防接種に関する健康教育の要点(例:目的は何か、村人と同じ目線でなど)
  6. 予防接種に関する健康教育の演習(予防接種の目的、予防接種の種類、接種年齢、予防接種の副作用とその対策)

研修3日目 研修の仕上げとして実際にタムライ村の5歳未満児の体重測定と予防接種を実施

演習のよかった点として、体重測定の設定場所がよかった、新しいVHV もそれなりにがんばった、役割分担が十分ではなかったが全員が参加した、などであった。弱かった点は、健康教育がまだ十分でないことであった。参加者の意見として、新しいVHV からは3 日間いろいろ学べてよかった、今後、皆といっしょにがんばりたいという意見が出され、また、村長からは体重測定は統一された方法で、皆が一緒の気持ちで取り組んでいてよかったとの意見が出た。

VHV 研修後のフォローアップの実施

県および郡保健局職員の協力を得て、グループに分かれ数日かけてVHV の活動状況を確認した。今回は体重測定と予防接種を試験的に同じ日に実施した。ただ、実施するヘルスポスト職員が一人しかおらず、遠い村から予防接種を始めたため、近い村へはお昼ころの実施となり、母親達を待たせてしまった。雨期に入った今、村人の関心事は田植えである。フォローアップ時も畑に子供を連れていって体重測定に来ない母親がいた。来るべき子どもが来ないことに対しては、体重測定などの目的を母親に説明し、前日にへルスポストの職員の協力を得て、体重測定や予防接種の実施について周知を徹底させる必要があるのではないかとの意見が出た。
  また、私自身、毎回疑問に思うことであるが、体重測定だけでも記入する書類が多すぎることである。例えばISAPH ではそれぞれの子供の成長カードにプロットすることと、体重増加が思わしくない子、そうでない子を別の台帳に記入することを推し進めている。同時に郡保健局ではひと目で体重増加が思わしくない子どもがわかるよう巨大な成長カードに村の1 歳以下の子ども全員の体重をプロットしていたり、その他にも記入すべき別の台帳がある。プロットするだけでもVHV は大変そうである。郡は県に提出する責任があり、力を入れて必要書類への記入をVHV と一緒に実施している。場所によっては午前中いっぱいかかって記入を終わらせていて、無償のVHV への負担は大きい。もうすこし見守って何かいい方法を提案していきたい。今回は予防接種についての健康教育を実施したが、ベテランの郡病院の職員と比べると当ISAPH のローカルスタッフにはコミュニケーションスキルなど勉強の余地は大いにあると感じた。この件に関しては、6 月下旬にISAPH の2 名の看護師職員をビエンチャンの母子保健センターへ3 週間の保健教育の研修に出した。

VHV 研修後の反省会の実施

参加者:県保健局管理課長カンケオ氏、県保健局母子保健課ケオタ氏、郡保健局長カムコン氏、ISAPH スタッフ6 人

今回の研修で良かった点は、参加者が時間を厳守し、時間の配分もよかった。場所もお寺であったためスペースも十分ありよかった。悪かった点として連絡が十分でなかったのかVHV が当初全員来なかったこと、また、村長が2 名しか参加しなかったことである。VHV からの要望としては、研修内容を詳しくしてほしい、また、3~ 6 ヶ月に1 回復習の研修をしてほしいなどがあった。講師からは1 回の研修のみでは学んだ内容を覚えていないのでフォローアップ時に確認、指導するのはどうかという提案があった。なお、今回のVHV 研修に要した費用の合計は8,901,000 kip( 約9 万円)であった。

その他、カンケオ氏よりISAPH から出している報告書の内容について指導があった。具体的には経過報告のみでなく、その後どうしたいのかも入れること、写真なども挿入するなどであった。ISAPH としてもローカルスタッフへ同様の指導を芝田さん、齋藤(賢)さんより行っているところである。

次回のVHV 研修について打ち合わせ

郡保健局が実施した最後のDrug Revolving Fund(DRF)に関する研修は1997 年であった。県がユニセフとJICA の協力を得て実施し、8 日間の研修で(Growthmonitoring に3 日、DRF に5 日)、テキストもあった。当時は3 ヶ月に1 回フォローアップをしていた。シードマネー(元手)として全部で30 米ドルを投与したとのことである。DRF 台帳も使用していて、内容は月日、病名、薬品などを記録していた。お金がない人から薬の代金を徴収できなかったなどの管理面で問題があり、立ち行かなくなったケースが多いとのことである。当時の研修を受けたVHV のほとんどは替わっている。次回のISAPHの第3 回目VHV の研修で取り上げる疾患として、マラリア、ARI( Acute Respiratory Infection)、下痢、寄生虫、熱、胃痛などはどうかとの意見が出た。研修日数は3 日間(疾病に関して2 日、薬の管理方法について1 日)で、日程は9 月13 日~ 15 日を予定している。講師として、郡保健局からカイカー氏(母子保健課に所属し、いつも協力してくれている)、ソムサック氏(薬剤師)、サイソムワン氏(病院長)が主となる予定である。

ISAPH TOKYO 齋藤 智子