コクトン村での井戸作り

齋藤智子さんの報告にもあるように、カムアン県セバンファイ郡コクトン村をISAPH LAOS の活動モデル村としました。最終的な検討の結果、この村の井戸設置を支援することが決まりました。ただし、単なる資金提供とならないように、村落住民との話し合いを深めながら、問題を取り上げ解決していくというNGOとしての姿勢「パートナーシップ」が大切です。

ISAPH LAOS では、現存する井戸の状況や住居分布を把握するために村のマッピング作業をしたり、村長を中心とする村の責任ある立場の人々からなる井戸作りの組織化を促したり、郡保健局水道課カンパオ氏や郡庁職員でコクトン村担当のケソン氏に作業協力を要請しました。以下はある日の村での打ち合わせのメモです。

2月17日(金)19:30頃~ 21:00頃

村長宅にケソン氏、コクトン村長、カンパオ氏、齋藤、タダム(ISAPH ローカルスタッフ)、村落住民-居住区の区別無く家長などということで参集、男性約20人、女性約10人が集い、井戸設置後の管理等について話し合った。

ケソン氏

「このたびのISAPHの協力によって乾期の井戸枯れや、雨期の汚染の心配が無い、公共の用に資する井戸が作られつつある。当然、その管理・清掃などは住民全体で責任を負う必要がある」と演説・説明し、共同管理責任の原則が了承された。

コクトン村長・青年同盟の一人

7人からなる5基の井戸全体の統括管理者と各井戸に付き2名の代表管理者の任命が動議され、拍手で了承された。井戸を使用していく上で発生する諸問題は、各住民からこれらの管理責任者に付託されて解決することになった。

ISAPH LAOS

「井戸の清掃・管理あるいは問題解決などをすることは良いことだ。これをより進めて、地域住民が保健衛生に関心を持つよう、ISAPHが定期的(1~2ヶ月に1度くらいの頻度)に、各井戸単位での集会(衛生教育の普及など)を企画したい」と要請し、了解された。 このような経緯で、村内5カ所の既存の素掘り井戸をさらに掘り込み、セメントリングを填めることによって、乾期に枯れず雨期でも夾雑物が混入しない、生活用水としての質と量の確保を目的とした井戸作りがコクトン村とISAPHで合意されました。住民の協力とコストの両面を考慮しながら、はじめの数基分は、試験的に鋳型と材料(セメント、砂利、砂、鉄筋)による手作りでセメントリング作りを試みました。作業の進捗状況について説明します(活動時のメモから抜粋)。
  • 郡保健局からも鋳型を借用したが、ISAPHのものとサイズが合わず(郡< ISAPH)肉厚も少なかったので、ISAPHの鋳型のみを使用して、1日4体(2m分)の量産体制に入った。
  • カンパオ氏、ケソン氏、コクトン村長、齋藤などで打ち合わせた結果、材料・器械の紛失を防ぐ意味から、村長宅を井戸5基分のセメントリング生産現場にした。
  • カンパオ氏からのセメントリング作成に関する技術移転は、ほぼ順調に行われた。2基目以降のリング作成はそれぞれの番地の住民などが担当することになった。
  • 現状のペースでリング作成が進めば、3月22日頃には1基目分のリングが完成する。井戸を掘り進めてリングをはめる工程には、県保健局水道課などが所有するポンプを借用し、効率的に残り水を汲み上げる必要があるとのこと(カンパオ氏談)。
  • 第1回目の搬入機材の量は、セメント33袋(1650kg)・砂利5m ³・砂5m ³・鉄筋100kg・針金5kg などで、これは約2~3 基分の井戸に相当するのではないかとのこと(カンパオ氏談)。
  • 3月末現在で、3基の井戸にセメントリングの填め込み作業が終了している。

今後の問題点

計画当初、井戸掘りの深さについて、水の質・量を確保する観点から10mが適当と考えていました。しかし、最も水位が下がる乾期の3月末でも6m程度で水があふれ、ポンプで水を汲み上げて追いつかず、さらに掘削することはできませんでした。村長やカンパオ氏からこの深さでの設置が妥当であるとして作業の継続を求められ、疑問を感じつつも了承しました。この際、仮にその後何らかの責任問題が起こったときの次善の策として、この経緯を書類にして残しました。

ところが、その後、深さを半減した分、設置箇所を倍増するように村から要求されています。これまでに我々がやってきたことは住民側にしてみれば殆ど理解されておらず、残念ながら資金提供の域を出ていなかったのか、とがっかりしました。NGOが果たすべく「パートナーシップ」の難しさを痛感しました。しかし、現時点でこのような問題点が浮上してきたことを逆に好機として捉え、井戸作りの根本に立ち返って、再度、住民との話し合いに取り組み、真のパートナーシップを確立したいと思います。

ISAPH LAOS 齋藤 賢之